エスケープ

「あ……しまった」
立ち止まってスマホのホーム画面を開くと、14:08の文字。午後の授業はとっくに始まってしまっている時間だ。
ちょっと昼飯を買いに行くつもりだったんだけどな……いつの間にか、ふらふらと結構遠くまで歩いてきてしまっていた自分に思わず苦笑する。
俺、籠田灯真は、この街にあるいちくら学園の生徒だ。……ちょっとまち歩きが好きなだけの。
通知バーからメッセージアプリを開くと、同じクラスの奴から「授業始まるよ」「どこ?」「おーい」といったメッセージがいくつも来ていた。……気付かなかった、ごめん。
あいにく、バスは約30分後。この便に乗って行っても、少なくとも今やっている授業は間に合わない。
ついでに言うと、その後の授業も遅刻になるだろう。
「ごめん、サボるわ」とだけ返信してスマホをリュックにしまう。
諦めも肝心なんて言葉もあるし、少しくらい休んでも単位的にはなんとかなるはず。風邪だってここ6、7年くらいひいてないし、他に休むことだってないだろう……そのはずだ。
「まいっか!」
俺は、学校と逆方向に向かって歩きだした。

  • 最終更新:2018-03-11 09:56:05

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