灌漑部、遠征へ
掘田馬はスコップをぐるぐると回す。
身の丈ほどもある純鉄のスコップをおもちゃのように軽々と扱う。鍛え上げられた筋肉がそれを可能とするのだ。
「根性さえあれば、どうにかなるんだよ。昔から、コンピューター様があったとでも言うのかい?」
渇ききった、かつて水田だったそこに、ズシン。スコップが刺さる。
「灌漑とは渇いた田畑に水を引くことさ。土を掘り、水の流れを読み、また土を掘り、空の機嫌を窺い、そして土を掘る。電気が届いていないなど些細なことだ」
そんな落ち着いた様子の掘田馬に、肩を落としていたひとりの生徒が問いかける。
先輩のその気力はどこから来るんですか?
掘田馬は白い歯を見せた。
「そりゃあ、うまいメシを食うためさ」
――さて、このやりとりを見ていた地元のお爺様方、一体何人が彼を現役高校生だと信じてくれただろうか…………。
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セリフとり
「根性さえあれば、どうにかなるんだよ。昔から、コンピューター様があったとでも言うのかい?」より
- 最終更新:2018-03-03 00:18:40